イタリア料理~トスカーナ州 その2~
「イタリア料理」というものはないと、よくいわれますが、州ごとに異なる食文化、さまざまな郷土料理があります。
先回、トスカーナ州の前菜、ハム、オリーブオイルについて書きましたが、今回は、プリモ、セコンドについてご紹介したいと思います。
プリモ・ピアット
プリモピアット primo piattoは、季節ごとに異なる。
冬の定番は「リボッリータRibollita」。
多種類の野菜のスープに固くなったトスカーナ・パンを加え、オリーブオイルで仕上げる滋養豊かな一品。
秋・冬なら「フェットゥッチーネ(きしめん状の平打ちパスタ)のイノシシソース和え Fettucine al Cinghiale (フェットゥッチーネ・アル・チンギアーレ)」 をぜひ味わってみたい。
野菜の甘みとバジルの香りが爽やかなトマト風味のパン粥「パッパ・アル・ポモドーロ Pappa al Pomodoro」も食材はトマト、 ニンニク、バジル、パンのみといたってシンプルで、おなかにも優しい。
バジルが最も香り高い夏場には、さわやかなパンのサラダ「パンツァネッラ Panzanella」も味わってみたい。
野菜の旨味をストレートに味わいたいなら「アクアコッタ Acqua Cotta」がすすめ。
水、塩、胡椒だけで野菜を煮込み、ペコリーノチーズを振りかけたマレンマ地方の伝統料理だ。
「ペコリーノ・トスカーノ Pecorino Toscano」はDOP食品でもある。 また沿岸部のグロセット地方で作られる 「ペコリーノ・ロマーノ Pecorino Romano」もDOP食品で、 ペコリーノ・トスカーノよりも塩分が多く、 主に料理に使用される。
暑い夏に涼を取るには、冷たく冷やしたスペルト小麦 farroのサラダ「インサラータ・ディ・ファッロ Insalata di Farro」がある。
小さく切った野菜と、繊維質たっぷりで、ぷちぷちした食感が魅力のスペルト小麦を混ぜ合わせ、 よく冷やしたサラダなら盛夏でも食が進むこと間違いなしだ。
セコンド・ピアット
セコンド・ピアット secondo piattoのメニューなら、最低でも500g以上で調理される豪快なTボーンステーキ 「フィレンツェ風ビフテキ Bistecca alla Fiorentina(ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ)」が名高い。
キアーナ牛 chianinaは、キアーナ地方のブランド牛。
キアーナ牛は肉汁が多いため、旨味を逃さないように表面のみを焼き固め、 あとは塩、胡椒、レモン、オリーブオイルを振りかけただけでいただくのがフィレンツェ風。
旬のイノシシ肉を使った料理も多く、秋・冬なら イノシシ肉のシチュー「チンギアーレ・イン・ウミド Cinghiale in Umido」をぜひ味わいたい。
脂身が少ないイノシシ肉はサラミ salumeやソーセージ salsicciaにも加工されるので、滋味溢れる味わいを一年中楽しむことができる。
典型的な冬の料理なら「ペポーゾ Peposo」が筆頭だろう。
2歳までの仔牛肉のぶつ切りを、香味野菜とトマトでじっくりと煮込み、胡椒をたっぷりと効かせた料理で、トーストしたトスカーナ・パンに熱々のペポーゾをかけて食べると心身ともに暖まること間違いなしだ。
IGP食品の、良質の仔牛肉「ヴィテッローネ・ビアンコ・デッラッペニーノ・チェントラーレ Vitellone Bianco dell’Appennino Centrale」 が使われていればさらに味わい深いだろう。
家庭でも手軽に親しまれているのがモツ料理。
細かく切った牛の第二胃袋(トリッパ)をトマトソースで煮込んだ 「フィレンツェ風トリッパ Trippa alla Fiorentina(トリッパ・アッラ・フィオレンティーナ)」は、モツ好きには外せない一皿。
白ワインと香草で下茹でされたトリッパは案外くせがなく、独特の食感が魅力。
また屋台などでも売られている、牛の第4胃袋「ランプレドット Lampredotto」の煮込みもぜひ味わっておこう。
好みで塩・胡椒とバジル・ソースや辛味のあるソースをかけていただくシンプルで飽きのこない味だ。
白インゲン豆 fagioliやヒヨコ豆 ceciを使った豆料理も有名。
白インゲン豆は、セコンド・ピアっとの付け合わせ(コントルノ Contorno)として食される。
ピストイア近郊の小村ソラーナで収穫される白インゲン豆「ファジョーロ・ディ・ソラーナ Fagiolo di Sorana」の風味の高さは名高く、IGP食品に指定されている。
トマトソースとセージで白インゲン豆を軽く煮込んだ香ばしい一皿「ウチェレット Ucelletto」 に使用すれば最高の味わいが楽しめる。
ヒヨコ豆のスープ「ズッパ・ディ・チェーチ Zuppa di Ceci」などもトスカーナらしい素朴で気取らない味わいが魅力だ。