イタリアの一家に一台のムーランで作るトマトソース
日本ではめったに使うことがないムーラン。
裏ごし器のことですが、イタリアでは「パッサヴェルドゥーラ」と呼ばれます。
「パッサ」は裏ごしするという意味で、ヴェルドゥーラは野菜。文字通り野菜の裏ごし器です。
トマトソースを作るときに必須の道具で、イタリアの家庭には必ずあるアイテムです。
私が初めて使ったのは、10年くらい前、料理教室の通訳で、トマトソースを作った時です。
くるくる回すと下から液体が出てきくる仕組みですが、回しても回しても少しずつしか出てこなく、「なんて不便な道具だろう」と思いました。
それでも、「必須の道具と先生がいうことだし」と思って、料理教室の後、購入しました。
洗うのも不便だし、収納にもかさばるし、なにがいいのだろうと思いながら、使っているうちに、「やっぱりトマトソースにはこれが必要!」と思うようになりました。
ミキサーで、がーっと撹拌するより、格段においしいトマトソースができるのです。
裏ごし器だけあって、トマトの皮は最後に残り、よりデリケートな味わいになります。
皮を使わないなら最初にむいておけばいいわけではなく、皮を一緒に煮ることで皮から旨味が出ます。
ミキサーは電気の力で細かく「切る」道具ですが、ムーランは「すりつぶす」という違いがあります。これがポイントなのだと思います。
バジルのジェノヴェーゼペーストも、ジェノヴァでは、撹拌するのではなく、すりつぶして作ります。以前、ジェノヴァ出身の友人の家で、ジェノヴェーゼペーストをごちそうになったときに、「撹拌するなんてもってのほか!すりつぶさなきゃおいしくない!」と言われたことを思い出しました(私はそれまでミキサーを使って撹拌していたので)。
「野菜の裏ごし器」というだけあって、トマト以外の野菜にも使うことができます。
南イタリアではトマトだけでトマトソースを作りますが、トスカーナでは「ポマローラ」と呼ばれるトマトソースで、玉ねぎ、ニンジン、セロリを一緒に煮ます。
玉ねぎ、ニンジン、セロリの甘みも加わったソースになります。
ムーランを使うと、セロリのスジも取り除くことができて、なめらかになります。
今日は、ポマローラを作りました。
トマトの季節にしか作らない夏のメニューです。
冬にもトマトは売られていますが、冬のトマトで作ってもそれほどおいしくできません。
作り方はとっても簡単。材料を鍋に入れて煮るだけです。
根気がいるのは、すりつぶす作業。
事前に作っておけば、茹でたパスタに混ぜるだけ。作り置きしておけば時短になります。
ポマローラのレシピ
材料
- トマト 500g
- 玉ねぎ 半分
- ニンジン 1本
- セロリ 1片
- バジル 5枚くらい
- オリーブオイル 大さじ1
- 塩 適量
作り方
- 玉ねぎ、ニンジンは皮をむき、ぶつ切りにする。トマトもぶつ切りにする。
- ①とバジルとオリーブオイルを鍋に入れて、蓋をして弱火で約50分~1時間煮る。
- 塩で味を調える。
- ムーランで裏ごしする。
長時間煮ることで、野菜の水分が蒸発して、味が凝縮し、クリーミーなソースになります。
鍋に水分がほとんどなくなった状態で裏ごしします。
「こんなに水分がないのに、本当に液体のソースになるの?」と思うくらいがちょうどいいです。ちゃんと野菜の中の水分が残っているので大丈夫。
逆に、水分がまだたくさんある状態で裏ごしすると、水っぽく味の薄いトマトソースになってしまいます。
パスタを混ぜるときは、そのままパスタにからめてOK。フライパンでオリーブオイルを熱して、トマトソースを炒めて、、、という必要はありません。
お皿に盛りつけてから、生のオリーブオイルをかけてあげれば、とっても風味豊かな一品になります。
お好みでパルミジャーノやペコリーノロマーノ、リコッタサラータなどのチーズもかけてくださいね。