ポーランド映画『ヘイター』をみて差別について考える
Netflixで配信され、話題になっているポーランド映画『ヘイター』をみました。
格差社会をベースにしたサスペンス映画です。
イタリアに住んでいると、同じヨーロッパのポーランドの情勢、ニュースも目にしますが、ポーランドのことはほとんど知らないです。
閉鎖的、格差社会の問題など、なんとなく暗いイメージがあったポーランドですが、『ヘイター』みて、かなり衝撃をうけました。
ヘイター (2020)
THE HATER
ポーランド
136分
監督:ヤン・コマサ
キャスト:
マチェイ・ムシャウォフスキー(トマシュ)
アガタ・クレシャ(ベアタ)
ダヌタ・ステンカ(ゾフィア)
ヴァネッサ・アレクサンダー(ガービ)
ストーリー
大学を強制的に追い出されてしまったトマシュは、SNSの運用の会社に就職する。そこで実力を認められて、調子にのり、ネット上で悪夢をばらまくようになる。
感想
そんなに期待もせずにみたのですが、かなりよかったです。
とにかくトマシュ役がすごい。
ハラハラしながら引き込まれます。次はどうなるんだろう、みたいな。
感情をあまりあらわさない表情なのに、感情が伝わってくるのがすごい。
不気味な感じがあり、ひやひやします。
特に、市長候補とゲイクラブに行くことろは、ひやひやしました。
でも、ポーランドの社会背景を少し知っておかないと、つまらなく、長い映画だと思います。
ここからは、映画をみて、もやもやと差別、偏見のことについて考えたことです。
ポーランドは、ヨーロッパの中でもレイシズム(差別主義)が蔓延しているといわれます。
ポーランドには行ったことがないので、実際のところはわかりませんが、ポーランドの闇がみえた映画でした。
それに比べたら、イタリアは明るいなと思います。
イタリアでも、肌の色、性別、階級などなど、差別、偏見はあります。
もはや人口の10%近くが外国人となり、生活をするうえでは、そこまで差別や偏見もないかなという感じですが、仕事となるとやっぱり差別があります。
外国人がする仕事、イタリア人がする仕事のようなイメージがついている仕事もあります。
ワイン用のブドウの収穫も外国人労働者にたよっています。
それでも、日常生活では、差別や偏見はずっと少ないと思います。
日本のほうがはるかに闇ではないでしょうか。
日本では、みんな同じことがよしとされているような風潮があり、外国人は大変だと思います。
そもそも入国するのも滞在するのもハードルが高いですし、長年滞在していても制限があります。
私が日本でイタリア語を習っていたイタリア人の先生は、家を借りるのも大変といっていました。
日本では、外国人だけでなく、LGBTQや障がい者の人たちも、「スタンダード」ではない枠でみられています。
スタンダードな社会とそうでない社会があるかのように別々になっていて、双方を受け入れる教育、福祉の体制が整っていません。
日本では、統一教育がすごく遅れています。
健常者は、障がい者の人たちとどう接してよいかわからず、なんとなく避けている雰囲気です。
テクノロジーがここまで発展して、グローバル化も進んでいるというのに、日本は閉ざされていると思います。
イタリアは移民を受け入れている国ですから、寛容でもあります。(それはそれで、移民問題がありますが)
カトリックの国ゆえ、困っている人を助ける文化もあります。
統一教育も進んでいるので、障がい者とどう接していいかなどためらうことはなく、一緒に生活できます。
人それぞれの個性が尊重されるイタリア社会では、スタンダードであることは必要ないです。
病院の受付の人や、役所の窓口の人など、公共の施設に行くと、障がい者の人が働いているのを目にします。
障がい者の知人は、デスクワークができる職種で、一流ファッションメゾンに就職しました。一般企業で、それも高級ブランドで働くことができるっていいなと思いました。
LGBTQの知り合いたちは、厳しい風当たりをうけていることはまったくなく、みんなフランクで楽しい人たちです。
ポーランドの事情がわからないので、イタリアと日本の比較になってしまいましたが、いろいろ考えさせられた映画でした。