偽物ワインのドキュメンタリー『すっぱいブドウ』
先週、イタリア中を騒がせた偽物ワイン「サッシカイア」のニュース。
タイムリーに偽物ワインの映画を見ました。
Netflixで配信されているドキュメンタリー『すっぱいブドウ』。
「目が眩むような高値で取り引きされる高級ワイン。それが偽物だったとしたら…。高級ワイン詐欺の実態と、何百万ドルもの大金を鮮やかに欺し取った手口に迫る。」
と、興味がそそられます。
すっぱいブドウ(2016)
Sour Grapes
アメリカ
85分
監督:
ルーベン・アトラス
ジェリー・ロスウェル
以下、ネタバレを含みます。
ストーリー
舞台はアメリカ。
中国系インドネシア人のルディ・クルニアワンがワインを偽造し、逮捕されるまでを描いたストーリーです。
ロマネ・コンティなど、投資の対象となる高級ワインが偽造されます。
ルディはワインの天才で、カリフォルニアワインを混ぜ合わせ、フランスの高級ワインの味に似せるという技で偽物ワインを作りだします。そして、オークションで売却し、大儲けをしていました。
ブルゴーニュのドメーヌ・ポンソのクロ・サン・ドニ1945年~1971年ヴィンテージがオークションにかけられたことで、偽物疑惑が浮上します。
クロ・サン・ドニは80年代になってから造られ始めたので、オークションにかけられたヴィンテージは存在しなかったからです。告発したのは、作り手のドポンソ本人。
そして、それらのワインを出品したルディが疑われ、4年に渡る捜査ののち、逮捕されます。
感想
ドキュメンタリーは、たいていインタビュー形式で、たんたんと語られるので、ちょっと退屈しがちですが、このドキュメンタリーは異なります。
犯人のルディが逮捕される前の様子がふんだんに取り入れられているのです。ディナーの場面など、なんでこんなに映像を録画していたのだろうと思うくらいで、リアルです。
インタビューは、ドメーヌ・ポンソ本人、被害者、FBI、弁護士、オークションの関係者などで、ハラハラされられ、見入ってしまいました。
先週発覚した偽物サッシカイアは、生産の段階で偽物でしたが、ルディはすでに商品としてできあがっているワインを混ぜ合わせることで偽物を作っていたので、話は別です。
ルディの周りのワイン愛好家たちも、偽物だとまったく気づかずに飲んでいたということで、ルディの腕はまさに天才です。素人ならまだしも、高級ワインのコレクターたちをだますことは容易ではありません。
だまされたルディの周りの人たちは、ルディを責めずに、思い出にひたったり、感謝したりしています。
それは共感しました。
ワインコレクターも気づかないくらいすばらしい味のワインを作ることはたやすいことではありません。むしろ感心してしまいます。よっぽどの臭覚と味覚の持ち主で、さらに勉強家でないとできません。
ワインを囲むことは、ワインを共有すること、時間を共有すること、人生を共有することです。たとえ罪を犯した人であっても、ワインを囲んだ時間はいい思い出になります。
そんなことをいったら、偽物を作られた生産者には怒られると思います。でも、ワインとはそんな不思議な飲みものです。
犯罪は犯罪。偽物ワインではなく、もっとほかのことに才能を生かせたのではないかなと思ってしまいました。
そこまでの天才が、なぜ存在しないヴィンテージのワインを作ったのかが疑問です。
ルディの家に、じょうごもころがっていたので、それでワインを瓶に詰めていたようですが、いったん抜栓したものをまた瓶に戻すと空気に触れてしまいます。それも疑問でした。
若いカリフォルニアワインを抜栓すると、古いフランスワインのようになるのか。。。移し替えるときの酸化までを考慮してブレンドしていたのだとしたら、ますますすごいです。
ワインコレクターたちの邸宅やワインセラーもきらびやか!ワイングラスが並ぶディナーは豪華で、リーマンショック前とはいえ、こういう世界に高級ワインがどんどん売れるのだとあらためて思いました。
オークションの舞台裏の鑑定する場面も興味深かったです。緊張感があって、ここでも見入ってしまいました。
途中途中のブルゴーニュの景色や畑も風光明媚。ブルゴーニュは行ったことがないので、ぜひ行ってみたいです。
というわけで、ワイン好きな人へはオススメな映画です。
ちなみに、イタリア語は字幕のみで、吹き替えにはなっていませんでした。いつもイタリア語吹き替えで映画を見ているため、英語音声&イタリア語字幕には慣れていなく、細かいところでわからないところがありましたので、私の疑問点がすでに映画で語られていたらすいません。